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 三舩優子 インタビュー



三舩優子の新CD「Winged」は、ピアニストとしての魅力と、ひとりの人間としての心を、たっぷりと感じることができるアルバムとなっています。
「愛と祈り」をテーマに、祈りを捧げるような優しい曲から、ジャズ的要素のある作品、 そして超絶技巧を要する楽曲まで、 さりげなくラインナップされ、自然と三舩優子の世界に誘われます。
また、3月7日に行われるリサイタルのテーマ “〜Angel's Hymn〜 浄奏の響き…”に込められた三舩優子の現在の心境や、作品についての想いを聞きました。

Q:2002年12月にリリースされたCD「Winged」が注目されています。タイトルの由来は?

当初は別のものを考えていましたが、この言葉には、広がりがあり、見晴らしが良く、上に向かっていくというイメージがあるので、全体のコンセプトに一番当てはまるものでした。わかるようでいて、わからないというような抽象的な感じもすごく気に入りました。「Winged」というと翼なんだろうけど、なんなのだろうなという、あいまいさも残したのです。CD全体を通 して「愛と祈り」をテーマとしていますが、イマジネーション(想像力)をすごく大切にしたいと思いました。また、日ごろから、人が音楽を聴いて、そこから何かをイメージしたり、何か考えがひらめくような演奏ができたらなと心がけています。もちろん音楽自体の良さや、それぞれの作曲家の素晴らしさを伝えたいと思いますが、音楽として耳に入ってくる音として聴いたときに、そこから何かが膨らむというか、懐かしい感覚が蘇ったり、ふとしたことを感じてくれる時間となればいいと思っています。

 

Q:「Winged」は、天使がモチーフの作品だそうですね。

作曲家のブルース・スタークさん自身が、ずっと天使にこだわりがあって、天使は目には見えないけれども、自分たちの周りで常に飛んでいて、いろんなインスピレーションを呼び起こしているというふうに感じているようです。
まさにイマジネーションが広がる曲で、たぶん聴く人によって感じ方が違うと思います。スケールの大きい曲で、技術的にも暗譜も本当に難しいですが、弾きがいがあります。天の声を感じるんですけれど、呼吸に左右される曲だと私は感じています。ため息とか、弾きながらでもハァ〜っと息を漏らしたり、腹式呼吸してしまったり、息を止めたりとかしないと表現できないような曲です。
またスタークさんは、私の演奏を聴いて、ご自分が思っていたのと違うフレージングや解釈から、「そういう弾き方があったんだ」と驚かれたり、新たなインスピレーションを得たりしてくださったそうです。同時代の作曲家と意見を交わし、お互いに刺激しあえるのは、とても素敵なことですね。

 

Q:バッハ=ブゾーニのコラール「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」の音色には、心が「ホッ」とするような印象がありますね。

空気の膜を作るような響きを求めて、"仕掛け"というか、特別 な技法で演奏しています。ミケランジェリが、スカルラッティやその時代の作品を弾いているときに行っていたペダルの使い方で、リヒテルの指定調律師として有名なヤマハの村上輝久氏に教えて頂きました。 オルガンやチェンバロのような独特の余韻を残すために、弦をペダルでずらす方法です。左のペダルは深く踏んでしまって、右のペダルは一回踏み込んでから半分ほど戻すと、微妙な余韻がのこるんです。完全に響きは切れないけれど、濁ってしまうほどはふまれていないという、、、。すごく難しいんですけれどね。 またリヒテルやミケランジェリの名言もお話しくださいました。リヒテルは「ペダルは心の振動だ」と言い、ミケランジェリは、お弟子さんがペダルの使用について質問すると、「赤ん坊が生まれたときに、君は呼吸の仕方を教えるか?」という喩えをして、「ペダルも人に教えられるものではない。その人の呼吸だ」という言葉を遺されたそうです。村上さんとはレクチャー・コンサートでよくご一緒しますが、とても勉強になります。

Q:プロコフィエフの「シンデレラ」をとりあげたきっかけは?

義父がリヒテルと同時代のピアニストでした。もう亡くなっていますが、ものすごく上手で、レコードがいくつか残っています。ずいぶん前のことですが、そのレコードを聴いたときに知らない曲があって、何だろうと思っていたら「シンデレラ」だったとわかりました。それを思い出して弾くことにしたのですが、この作品102は楽譜を手に入れるのが大変で、日本の図書館のどこにもありませんでした。そこで、夫の友人のニクーリンさん(ロシアナショナル管のメンバー)が、ロシアで探してくれて、コピーをしてくださったのです。

 

Q:三舩さんというとリスト作品をよく取り上げているイメージがあります。

リストはロシアものに比べると、“親友”みたいで、身近にいて気心が知れたという感じです。音楽も技巧も難しいんですが、自分の手にすごくしっくりきて、どういう風に弾いたらよいか、スッと自然にはまるという作曲家です。
ロ短調ソナタの魅力は、単純にいうと、「かっこいい!」ですが、美しさもあり、ひきつける要素がいっぱいつまっている曲だと思います。
リストは「天と地」みたいな、すごく大きな幅というか、極端なものを表現する作曲家だと思うので、そうした幅の広さとか、思いっきり地獄のドロドロした部分と、そこから天に昇って「無」になっていくような部分を表現できたらなと思います。
「シンデレラ」にはストーリーがありますが、リストのソナタにもストーリーをもって演奏するつもりです。例えば、ここは悪魔の戸を叩く音とか、具体性をイメージしながら弾きたいと思っています。きれいに歌うだけではなく、ページをめくるような感じで展開していけたらと思います。 スクリャービンはストーリーというより、絵を描くように「色」がイメージできるような感じに表現できたらと思っています。スクリャービンは複雑怪奇で、精神性が強くて、哲学的というか、「思想」という感じがあります。いままでも弾いてきましたけれど、やっとこれからはじめてみようかなという思いです。

Q: リサイタルのテーマの〜Angel's Hymn 〜とは?

当初は、CDに使おうと思っていました。直訳すると"天使の賛美歌"ですが、歌というよりは、天使のささやきというか、鼻歌というような軽さを自分の中でイメージしています。 「愛と祈り」というテーマは、昨年の同時多発テロのことも少なからず影響がありますし、また年齢的なものが関係していると思います。自分が本当に大事にしたいことがだんだんと少しずつ絞られてきますよね。それが何であろうと、自分がそう思ったら、貫きとおしていいというか、大切にしていくべきなんだというようなことを感じ始めました。 いろんなものに対する「愛」というのと、人々が救いを求める「祈り」というのは、それぞれの心の中にあって、口に出すものではないけれど、誰もがもっているものじゃないかと思っています。

Q:音楽の秘めている力をどのように感じていらっしゃいますか?

人の人生までも変えられてしまうような、大きな影響があるものだと思います。何の楽器もない時代にもあったものですし、祈りに救いを求めるのとおなじで、人の心を動かして変えることのできるものだと思います。 本当に不思議なのは、音の数は限られているのに、なぜこれだけの曲が生まれ、同じものはなく、こうも続いていくということですね。 また、クラシックの魅力は、何百年も生き残っているけれど、変化し続けているということだと思います。弾き手や聴き手を通 じて、毎回違うものが作り上げられて、生まれるということの面 白さみたいな。

 

Q:次の10年間は?

とりあえず今回で浄化して、、(笑) これから年齢を重ねていくことによって出てくるパワーがあると思うので、もっともっとパワフルになっていきたいなと思います。



 

2003年3月7日(金) 7:00 p.m. 東京文化会館小ホール
7 p.m. Friday, March 7. at Tokyo Bunkakaikan Recital Hall

プログラム:

プロコフィエフ:バレエ音楽「シンデレラ」より
Prokofiev:Piano Pieces from "Cinderella" op.102
「シンデレラと王子のワルツ」 Cinderella and Prince - Waltz
「争い」 The Quarrel
「舞踏会へ急ぐシンデレラ」 Cinderella's depature for tha ball
「アモローソ」 Amoroso

スクリャービン:ピアノ・ソナタ3番
Scriabin:Piano sonata No.3 fis-moll op.23

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ブルース・スターク:ウィングド
B.Stark:Winged
リスト:ソナタ ロ短調
Liszt: Piano sonata b-moll

全席指定席 \4,000 (消費税込)
ジャパン・アーツ夢倶楽部会員 \3,500
主催:ジャパン・アーツ  
協力:キングレコード ウエダジュエラー

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